口腔ケア

口腔ケアってなんだろう?

口腔ケア(オーラルケア)は、口腔内の清掃から口腔機能のリハビリまで、口腔全般に渡るケアを指します。口腔ケアの目的は、単なる口腔の疾病予防にとどまらず、QOL(Quality Of Life;生活の質)およびADL(Activities of Daily Living;日常生活動作)の維持や向上です。 高齢化が加速する社会において、一人一人が口腔ケアの方法と知識をしっかり身につけることが求められています。

高まる口腔ケアへの関心

数年前から口腔ケアという言葉を耳にすることが多くなりました。
この背景には、「20代でも7割近くが歯周病を発症している」「歯周病や舌苔(ぜったい)また食事内容が口臭の原因となる」といった事実が浸透し、口腔ケアに関する関心が急速に高まっていることが挙げられます。
でも、ご存知ですか?口腔ケアは、単に歯周病や口臭を予防するためだけのものではありません。もちろん高齢者だけに限定されるものでもありません。

口腔とは、口唇(くちびる)から軟口蓋(喉の手前)にかけての空間のことで、飲食物を取り込んで(摂食)、噛み砕いたり(咀嚼)、飲み込んだり(嚥下)するほかに、呼吸したり唾液を分泌したり会話したりするときなどにとても重要な役割を果たす器官です。
この「口腔を慈しみ労わること」が“口腔ケア”です。「口腔を治療すること」ではないので“口腔キュア”とは言いません。
では、「口腔を慈しみ労わる」とはどういうことでしょう? 口腔ケアを狭義で捉えると、歯や舌に付着した汚れなどを取り除き、口腔内を清潔に保つことを指します。たとえば歯磨きやうがいをすることが挙げられます。
一方、口腔ケアを広義で捉えると、歯石を除去したり義歯を手入れしたりすることも含まれ、さらに咀嚼や嚥下などの摂食訓練や言語訓練などのリハビリテーションまで含まれることがあります。
口腔ケアは、お口の健康に役立つことはもちろん、体や心の健康にも役立ちます。 ―――と言っても、健康な歯や歯茎を持っている人にはピンと来ないかもしれません。 歯茎が痩せ細ったり、歯がぐらついたり、歯の本数が少なくなったりすると、よく噛んで食べることができず、食事によって必要な栄養素を十分に摂取することができなくなります。

体に必要な栄養素は、サプリメントや流動食あるいは点滴で補えるかもしれません。しかし、それでは、食事するという楽しみがなくなると同時に、噛むという動作が少なくなります。
食事の楽しみがなくなると、食べる意欲が減退したり家族とのコミニュケーションが減少したりします。そうなると、口数や笑顔が段々少なくなり、自立する意欲や生活する意欲さえ減退しかねないでしょう。
その一方で、噛む動作が少なくなると、口や顎を支える筋肉や骨が退化していきます。口や顎を支える筋肉や骨が退化すると、顔貌が変わってしまったり、発音がスムーズにできなくなったりします。そうなると、外出したり人と接したりすることが億劫になり、社会との接点が薄れかねません。 また、噛む動作が少なくなると、唾液の分泌量が減ってしまいます。
唾液には、消化作用 / 抗菌作用 / 自浄作用 / 粘膜保護作用 / 再石灰化など、さまざまな機能があります。 この唾液が、噛む動作の減少のほかにも老化や薬剤の副作用の影響を受けて減ってしまうと、口腔内を清潔に保つことができなくなり、虫歯や歯周病に罹りやすくなります。また、口腔内が乾燥する状態、いわゆるドライマウスになり、口臭も生じるようになります。さらに、飲み下す力が弱くなるため、食べ物や唾液中の細菌が誤って気管支を通って肺に入ってしまう誤嚥が起きやすくなり、それが原因で誤嚥性肺炎を患うリスクが高まります。 そして、歯を使って噛むことによって刺激されていた脳神経細胞が段々と死滅していきます。
脳細胞の死滅は脳の老化を意味し、症状が進むとアルツハイマー型認知症を発症します。 ―――このようにお口の健康と体や心の健康には密接な関係があるのです。これは決して大袈裟な話ではありません。

口腔ケアはなぜ大切なの?―――歯周病がもたらすもの

口腔ケアによって、口腔を清潔に保つ同時に口腔機能を維持することができれば、必要な栄養を摂取し健康を維持することができ、また食事の楽しみや会話の喜びを感じることもできます。つまり、QOLの維持や向上に繋がります。
40〜50代を過ぎると、急激に歯を失うようになります。しかも、歯を失う原因は、40代以降の年齢層では半数以上が歯周病によるもの。歯周病は日本の成人の約8割が罹患しており、歯周病の予備軍とも言える歯肉炎に罹患する10代の若者が近年増加傾向にあると言われています。 この歯周病菌、実は口腔内のみならず全身の健康を脅かしています。
詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、心臓病などの心臓疾患 / 動脈硬化 / 脳卒中 / 糖尿病などの疾患のトリガーとなる可能性があり、また早産や低体重児出産のリスクを高めることもある、というショッキングな報告がなされています。 近年、高齢化社会に伴う医療費の加速度的な膨張を避けるべく、予防医療というコンセプトの下、日常の健康管理が重要な課題となってきています。その意味では、口腔ケアは予防医療の一貫として捉えることができます。
以上のことから、早い時期から口腔ケアを始めることに一定以上の意義と効果があると言えるでしょう。

口腔ケアの基本は口腔内を清潔に保つこと

では、どのように口腔ケアを行えばよいのでしょう。 口腔ケアと一口に言っても、自分で行うケア(セルフケア) / 介護者が行うケア / 歯科医師ならびに歯科衛生士が行う専門的口腔ケアがあります。 口腔ケアの基本は、お口の中を清潔に保つ、すなわち口腔内を清掃して口腔内の細菌を減少させること。具体的な方法としては、ブラッシング(歯磨き) / フロッシング(デンタルフロスによる清掃) / リンシング(洗口)が挙げられます。 若く健康な人にとっては、いずれも習慣付けてしまえば、どうということのない日常的な動作でしょう。しかし、握力の低下した高齢者の方や介護が必要な身障者の方には、的確なセルフケアは難しいでしょう。自力で磨けるところは本人に任せ、自力では磨けなかったり磨きにくかったりするところは介護者が手伝ってあげましょう。 セルフケアができる人にとっても、お口の中の汚れを的確に取り除くことは実は難しいことです。介護者が要介護者の口腔ケアを適切に行うことは更に困難を伴うことでしょう。歯科医師ならびに歯科衛生士に相談して専門的な指導や助言を受けることをおすすめします。

口腔ケアを目的とした歯ブラシの選び方

さて、現在さまざまな口腔ケア用品が市販されていますが、その中から、口腔ケア対象者の年齢や身体機能 / 健康状態および介護度によって適切な道具や方法を選択しなければなりません。 ここでは歯ブラシの選び方をご紹介しましょう。
柄が真っ直ぐなものやヘッドが小さいもの、毛が柔らかいものなどなど、色々な種類の歯ブラシが店頭に並んでいますが、口腔ケアを考えた場合、歯ブラシ選びには幾つかのポイントがあります。

  • 一直線のヘッドと柄
  • やや小さめのヘッド
  • 軟らかめのナイロン毛

というように、口腔ケアとしての歯磨きを行う上では、複雑な形のものよりも単純な形のものの方が使いやすいでしょう。 ただし、どのような歯ブラシを選んだとしても、1本の歯ブラシだけで隅々まで磨ききることは難しいでしょう。歯間ブラシや粘膜ブラシ、デンタルフロスあるいは電動歯ブラシなどを併用することをおすすめします。 なお、デンタルリンスを使用する場合は、第一に殺菌力、第二に爽快感を重視して選びましょう。

入れ歯のケアも口腔ケアのうち

年齢を重ね、自分の歯が少なくなると、多かれ少なかれ義歯(入れ歯)が必要になってきます。ただし、義歯を入れられるかどうかは別問題ですが。 総入れ歯であれ部分入れ歯であれ、口腔内を清潔に保つため、また十分な栄養を摂取するため、義歯(入れ歯)をきれいに清掃することはとても重要です。 十分な清掃が行われていない義歯を使い続けていると、残っている歯が虫歯になったり歯周病が進行したり、口腔内感染症や口臭の原因になったりします。また、きちんと義歯で咀嚼することが難しくなります。 義歯は外して義歯専用歯ブラシを使用して、歯茎は軟らかめの歯ブラシを使用して、毎食後に流水できれいにしましょう。それでも、義歯には目に見えない細かい汚れが付着するものです。そのような汚れは殺菌効果のある義歯用洗浄剤で1週間に1回程度使用してきれいにしましょう。 夜眠るときには義歯は外して、歯茎を休めることをおすすめします。 なお、義歯は、一度作ってしまえば一生使い続けられる、という類のものではありません。顎の骨 / 歯肉 / 歯などは、型をとったときと同じ状態にあるわけではないからです。合わなくなってきたら、お医者様に相談して微調整をしてもらいましょう。また、特に違和感を感じていなくても、半年から1年に一回は定期健診を受診しましょう。


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